あまりにレベルの低い話だが、今日は、月末ぎりぎりになって思い出したパン屋の300円券について、考えていた。もともと何週間か前に「お買い上げ金額の半分を金券でプレゼント」ということでもらったもので、当日は定価でパンを買っているのだから、この300円を使っても使わなくても、自分には影響がないはずのものである。
しかもこのところ自家製のパン種が弱っているためそれを鍛えるために、こまめにパンを焼かねばならず、在庫は多め。さらに今日は昼過ぎに注文しておいたスーパーからパンが少し届いていた。だからまったくもってパンは「余りすぎるほど」だったのである。
それでも、せっかく使えるものを使わないと落ち着かない。何回も考えたが、やはり落ち着かない。ちょうど夕方に家族が仕事に出ることになっており、帰りが遅くなったときに備えてパンでも買っておくとよいだろうという理由が思い浮かんだので(家にあるパンたちはほとんど食事パンだったので出先に持っていくには不向き)、駅近くまで同行してその金券から少しはみ出るくらいの金額を購入して、使い切った。
さて、前置きが長くなったが、この「買ったことに対するお礼と称してまた来店させようという方法」だが、少なくとも食品や日常的な商品においては、かなり成功するのではないかと思う。その段階で取引はいったん完結しているので、もらった金券を使うかどうかは本人の考え方次第だが、中にはわたしのように無理にでも出かけてしまう人間もいることだろう。
1年ほど前に楽天で洗顔料の格安セットを探していて、実はこの方式(買うたびに別商品のミニサンプルがはいってくるのでつい使っては、次はそのサンプルの商品が気になって購入候補にしてしまうなど)で、はまってしまった。いまでは洗顔料を注文の際に別商品もちょこちょこと買っている。別にサンプルを使う必要も、その後にまた注文する必要もなかったはずだが、なんとなく釣られる。自由意思で買っているように見えるが、実はたくみに誘導されているのかもしれない。それでも気持ちよく買い物しているのだから、問題ないだろう。
わたしは出かけたことがないが最近何かと話題の大塚家具は、敷居を低くするのではなく逆に門構えを立派にして、この門の内側にすてきなものがあるかないか、ご一緒に中にはいりましょうという具合に、門の中にはいることそのものにステイタスを感じさせる商売方法なのだろうと推測する。経営方針が今後変わることは考えられるものの、そうやって商売をしてきた数十年の歴史があるのだろう。家具本体よりもブランド意識とステイタスを重視した営業なのだろう。
さらに、敷居が低いようで実はかなり微妙なのが、テレビでよくCMをやっている「無料のお試しセットをもらっていただいたお客様にしか販売したくありません」の基礎化粧品会社。今日も昼間にどこかのサイトの隅でその広告が現れたので、興味本位に値段を見に出かけると、定価ではさほど大きくなさそうな基礎化粧品が1品あたり数千円。小さ目のボトルたちとはいえ、それらを詰め合わせて無料で送るというのは、きっとその後の製品を買わないと申し訳ないような気持ちにさせられるのだろうかなどなど、考えてしまいがちだ。そうでない人(申し訳ない気分にならない人)もいるかもしれないが、もし使ってみて気持ちよかった場合でもその定価ならぜったい買えない、だから最初から手を出さないという人も、いるだろう。
あくまで個人的な、そしてどちらかといえば庶民の考えだが、わたしが思う客の効率よい捕まえ方は「事前に特典をちらつかせたりプレゼント攻勢をしかけるのではなく、本人が自由意思で購入した何らかの商品に対し、ありがとうの気持ちをこめたおまけもしくは特典をつけていくこと」なのではないだろうか。事前に大盤振る舞いをしすぎると、その分の代金は今後の自分の買い物でまかなっていくのだろうとか、なにやら気前がよすぎて怪しいとか、あれこれよけいな印象を相手に与えがちだ。