先日Facebookのほうで、遺伝子組み換え作物の製造元であるアメリカの企業が、表示の規制が細かくなることに反対意見を持ち現地で訴訟を起こしているらしいとの記事を紹介したところ、数名の方から有意義なコメントをいただいた。
すでにそちらでお読みくださっている方も多いかと思うが、わたし個人の立場としては、不安に思う人もいるので表示規制が細かくなってもそれでいいではないか(なぜ細かく表示することを拒むのか)、といった思いをいだいている。
ただ、これは今後何年、何十年もして、もしかしたらまったく健康や自然環境への影響がないものだったと統計的に証明されることがあった場合、その将来の人たちは(わたしや、現在もっと強く反対を訴える人たちのことを)心配しすぎていてヒステリックだった人々、と評価するかもしれない。そのときは、潔く笑われることにする。だが逆もあるかもしれないことを、おたがいが肝に銘じておきたい。
その結論が出るまでの長い道のりのあいだ、もしあまりにも推進派と懐疑派の溝が深まった場合、様子を見ながら共存していけるはずの世の中であるはずが”ぎすぎす”したり、中傷合戦になったり、あるいは双方に対して巨大陰謀説がわき起こったりすることなりかねない。せめて現状で「表示を細かくして今後の参考になるようにしておきたい」という法律の流れや人々の感情があるのであれば、製造企業側はあまりそれに目くじらを立てず、要求につきあってくれてもいいだろうと、願いたい。
さて、話は少し変わって、表題にも書いたトランス脂肪酸。
(トランス脂肪酸は自然界にも乳製品などに多少は存在しているが、世の中で話題になっているのは主に人工的に作られた製品の中にあるトランス脂肪酸であるので、わたしもこのブログでは加工油脂製品でのトランス脂肪酸について以下を書く)
これは遺伝子組み換え作物の話とは違い「大量に摂取すれば体に害」というのは、ほぼ間違いない事項である。WHOでも摂取上限の参考値を紹介しているとのこと(このあたりはWikipediaの「トランス脂肪酸」ほか、関連項目の不飽和脂肪酸などを参考にされたし)。つまり、日本では行政がまったく規制に手をつけておらず一部企業の自主的な判断で軽減をしているトランス脂肪酸こそ、さっさとなんとかすべき事案なのだ。
つい最近まで、トランス脂肪酸の摂取上限値と、厚生労働省が考える日本人が摂取していると思われるトランス脂肪酸の数値について「欧米より少ないから規制の必要なし」という曖昧な表現以外、ほとんどネットで検索結果に出なかった。数値をきっちりと出しておけば人はもう少し安心するものだろうに、なぜ数値を出さないのかと、ずっと思ってきた。
だがこうして、ネットで数字が見られるようになってきて思うのが——たとえば朝食に、市販食パンを(マーガリンや加工油脂製品を塗って)食べている人と、微量の味付けのみで水から炊いた白米の粥をすすっている人が、同じトランス脂肪酸摂取量であるはずはない。これまでの「日本人の摂取量の平均」は、どんな層をサンプルにしているのか。サンプル数はどれくらいなのかはわからないが、食品安全委員会の資料によると1999年の学術論文データに基づいて、その後の「国民健康・栄養調査」の結果を加味しつつ、推定して上積みしているようである。それでもまだWHOの推奨する上限にはいたっていない、と。
これは要するに“そのうち「いたる」か「もういたっている」と考えるのが危機管理としては一般的であるように思える”のだが、いかがだろうか。なぜ問題を先送りにするのか、そこに「加工油脂製造業界への配慮があるのでは」という陰謀論(!?)が登場してしまうのである。あながち陰謀かどうかいいきれないところが残念ではあるが(^^;。
せめて、現在は自主的に数値を下げる努力をしている製造(もしくは使用している)企業に対し、その方向性を正しいと裏付けする程度のコメントでもよいのに、なぜ出せないのだろうか。それが不思議でたまらない。
こういった問題に触れることが少ない、あるいは事情を知らない人は、とことん知らないまま、家族と一緒の食卓にこうした製品をたくさん出してしまっている可能性はあるのだ。せめて、何らかの行動を(法律ではなくて指導や業界への依頼といった形でもいいので)起こしてくれたら、健康を保てる人の割合が、上昇するかもしれないと思うと、なにやらとても歯がゆい。