今日は中野の駅で初めての喫茶店にはいったとき、その店の珈琲のブレンドが軽くて華やかなものだったので、いろいろなことを考えた。
この10年くらいだろうか。どの店でもだいたい、何も指定せずに珈琲と頼めば「やや苦め」を出してくることが多い。もちろんミスタードーナツやデニーズなどアメリカの大衆的な店を名乗っている場合は違うだろうが、喫茶店などの話だ。だいたいは、やや苦めでコクがありそうに感じられるブレンドを出してくる。
20年以上前の喫茶店や、オフィス街で食後に珈琲をセットで出してくるような店は、そうでもなかった。キリマンジャロが中心だったのかもしれないが、やや酸味がある軽いブレンドが多かったように思う。そういう珈琲は(いわゆる)コーヒーフレッシュもしくは乳製品の味や香りに珈琲本体の持ち味が侵食されてしまうことがしばしばあり、注ぎ方をひとつ間違えると「コーヒーフレッシュを味わう」(ズバリ書くと植物油脂と乳化剤を味わう)ことと大差なくなってしまうリスクもあったが、それでも、濃いめ珈琲がいまほどもてはやされていない時代のこと、わたしはよく好んで飲んでいた。
確固たるデータがあるわけでもなく記憶に基づくが、豆をおろしている業者の味が珈琲に出る気がしている。たとえばキーコーヒーの看板を出している店の珈琲は、ただの珈琲を頼もうと別のブレンド名で頼もうと、共通する「キーコーヒーらしさ」があった。当時キーコーヒーのほかにも豆のおろしで系列があり、アートコーヒー、UCCコーヒーなどを使う店ではまた違ったが、店の数やわたしの遭遇率が高かったキーコーヒーにかぎって言えば、いまでも「ひとくち飲んだらすぐわかる」レベル。
現在の市販品でも、なぜか(ウマイまずいではなく)AGFのレギュラーコーヒーはすぐわかる。ああAGFの味だな、と。1杯ずつカップにセットするドリップコーヒーで最近の気に入りは、スーパーで買える小川珈琲店の喫茶店ブレンドというもの。だが小川とそれ以外の適度に美味な珈琲を出されてどちらが小川かを問われたら、もしかしたら間違うかもしれない。つまり、小川はわたしにとって「最近たまに遭遇する濃いめで無難に美味しい珈琲」の代表格なのだ。
スタバには出かけたことがほとんどないが、最近は西武新宿線の鷺ノ宮駅構内にあるカフェがちょっと気に入っていて、そこは安いのにけっこう美味。どうも珈琲館(UCCグループ)の系列らしい。
今日の店は、飲んだ瞬間「ああ懐かしい、昔の味だ」と感じた。それは味が古くさいわけではなく、軽くて「あの時代を思わせる香り」の珈琲が出てきたことによるのだろう。メニューには苦めの珈琲もあると書かれていたので、次回があるならそれも試したいと思う。
ところで「キーコーヒー味」という言葉で、味を連想していただけるご同輩は、いらっしゃるだろうか。