昨日のことだが、このところ営業時間が短くなったように思うある和菓子店の前を、たまたま開いている時間帯に通ることができたので、ここぞとばかりに串だんごを数本まとめて買い求めた。
わたしがその店で買い物をするようになってから、まだ10年くらいだと思う。だがすんなり買い物のチャンスに恵まれたわけではなかった。その当時から「定休日の案内もなくただシャッターが降りている日があるなぁ、いつ開いているのだろう」と、それこそ見張るようにしながら前を歩いていた。
和菓子屋が気になる性分なのだ。ネット上では全般的にケーキ屋よりも情報が少ないが、長くから土地につづいている店が多いのはどちらかといえば和菓子屋だろうし、看板を見れば「一度は買う」と闘志を燃やしてしまう。気になりはじめたあるとき「そうか、もしや何かの節句などかき入れ時でもない場合は、昼近くに開いているのかも」と思うようになり、そのくらいの時間帯に近くに行くことがあれば寄るようにしてみたところ、何度か買えるようになったというわけだ。
やっと買えた当時、ブログに買った物の画像を載せると、まったく存じ上げない方がふらりとブログにお越しになって、その店を知っている、なつかしいとコメントを残してくださった。しかも、店の脇の出入り口スペースは、以前はカウンターになっていて数名なら飲食ができたのだ、とも。その後、買い物のたびにちらちらと店内を意識して覗いたこともあったが、ずっと奥に厨房が見えて、販売のカウンターのすぐ奥は雑然とした作業台と関連用品、そして残念ながらその周辺には「片付ければもっとスペースが空くのにな」と思えて仕方がない日用品——たとえば新聞や何らかの雑誌のようなものが積まれていた。
おそらく後継者がいないのだろうと想像する。なんとなく店の雰囲気がゆるい。いや、ゆるすぎる。お店の方は昨日はご高齢の女性だったが、かなり動作もゆっくりしているようだ。せかすような客は多くないのだろうし、わたしももちろんせかしはしないが、店全体の気迫というか活気のようなものは、失われてひさしいようにお見受けした。だんごをはじめ、商品は美味なのだが、う〜ん、もしや体がきつくなったら店を閉めるとか、そういうことも検討していらっしゃるのだろうか。
このところ耳にする菓子屋の閉店情報の何割かは(景気が悪いという理由以外では)、こんなパターンが多い。
1 店のはいっている建物、もしくは持ち家を兼ねた店舗の場合は店のリフォーム問題が浮上(耐震構造その他の事情により避けて通るとしても限度があるので、いつかはもれなく遭遇する難しい問題)
2 あれ、待てよ、よく考えたら再入居(もしくは店舗としてリニューアル)したあとで、それに見合うだけの稼ぎって、何年かかるんだっけ…
3 あ、無理、ぜったい無理。後継者いないし。いまさら看板とレシピを誰かに預けて引退するわけにもいかないし、じゃあ、わたしの代で閉じましょう
……だいたい、こんな感じである。
わたしは小さな店舗の和菓子屋なら、そしてわがままを言って申し訳ないが1日数時間でよければ、修行を兼ねた店番をさせていただきたいのだが、こんな自分の都合だけはっきり言う人間を、どなたか働かせてくださるだろうか。それで店の人が数年だけでも長く店をつづけてくれるなら、街のみなさんのためにはいいことだろうと思う。正直なところ、和菓子よりほんとうはパン焼きのほうが得意だが、和菓子は「あんこの海におぼれたい」と思うことが年に1回くらいあるので(←大げさか ^^;)、熱意だけは負けない。
後継者不足の問題で名店や馴染みある店が消えていくのはさみしいが、それも時代というものなのだろうか。