いまさらながらだが、オリンピックの東京集中開催は難しいという話になっている。最初からそう思っていた人も多いだろうが、森元首相やら、あの人やらが「コンパクトな五輪」だと、まるで東京で文句なくできるかのように営業をして誘致したおかげで、この期間のあいだ、国内の他地域が競技の一部を受け入れてくれる実現可能性を大きく制限してきたのは否めない。
東京での集中開催は難しい。やっとそれがまとまりつつある。だがこの「出遅れ期間」のあいだに、他地域の条件はさらに厳しくなっているだろう。
たとえばこのところ、ただでさえ、外国人旅行者が増えた各地で宿が取りにくいという話を聞く。
東京はまだかろうじて、急な用事でも宿がまったくとれないということは(たぶん)ないと思う。いざとなったら24時間営業の店で雨露をしのぐという選択肢もないではないし、何か既存の建物を宿に改装できる余地もある。たとえばよく聞くのはラブホテルの転用などだ。
埼玉あたりも、う〜む、どうだろう、いざとなったら何らかの簡易施設(プレハブ)をまとめて建てる機動力はあるはずだ。選手、観光客、報道関係者が集まっても、それほど不安は大きくないだろう。
だが、開催県が宮城や南東北に広がった場合は?
震災から5年で仮設住宅に住む人もいるというのに、それらの人々の生活よりも、選手や観光客のための工事が優先されることになってしまわないだろうか。そして何より、東京だけでさえ「オリンピック前に」を号令に、これほどあちこちで建て替えやリフォーム工事をしているというのに、国の複数の都市でそれが増えれば、建設作業を担う人材を安全かつ迅速に、そしてじゅうぶんに、確保できるのだろうか。
最初から、東京オリンピックではなく「東京も一部の競技は担当するが原則として北関東オリンピック」のような位置づけで話を進めていたら、これほど段取りの悪いことにはならなかっただろうにと、本来なら日本にオリンピックを呼ぶのはもうちょっとあとにしてほしかった人間としては、つくづく残念に思う。