読むというタイトルにしてしまったが、実際には表題作を読んだだけで、残りはいまから読むわけだが、とにかく「さすが小松左京」と、うなってしまった。
前にも書いたが、わたしは時間SFが好きである。創元や早川のSFは短編集を中心にけっこう持っているし、映画でうるうるしてしまったので原作のペーパーバックはお守り代わりに買って読まずに積んでいるが、Somewhere in Time (ある日どこかで)などは、もう、映像作品で1回しか見ていないとは思えないほど、はまっている。これもDVDでお守りとして買えばいいのかもしれないが、怖くて買えないのだ(うるうるしてしまうから)。ラストで胸が苦しくなった、あの感覚を再現するのが怖い。
この短編集の表題作「時の顔」は、おそらくわたしが高校生のころ読んでいた小松左京作品より、さらに古いのだと思う。けっこう読んだつもりでいたため、当然これも読んであると思いこみ、いままで読まなかったのが悔やまれる。
読みながら、これだけが意味がわからないと思っていた部分が、最後にようやく解き明かされた。なるほど、そうだったのか。
まだお読みでない方にどう書いたらネタバレにならないのか悩んでしまうが、ハインラインの”All You Zombies”を原作としたイーサン・ホーク主演「プリデスティネーション」と、綾瀬はるか主演の映画「僕の彼女はサイボーグ」に似た感覚を覚えた。そっくりというのではない。ただ、似ていた。どれも好きな作品だ。
最初に誰がどういう話の展開でストーリーを描いたかではなく、これらはハインラインや小松左京が活躍した、とくに60年代以降に流行ったいわゆる「ハードSF」の系譜であり、産物なのだろう。うちの家族が言うには「猿の芋洗い」と同じで、同じような知性と才能を持った人たちが同じ時代にいたら、似た傾向の芸術を生むことはあるのかもしれない。
7作品を収録の電子書籍だが、残る6作品も楽しみだ。