赤ちゃんポストの英語訳 baby hatch は、言葉としては確立していると思っていた。実際に英語の新聞で日本の事情を説明するときにそのように使われているし、baby hatchで検索すれば他国の赤ちゃんポストの話題が検索できる。だが、アメリカ在住の知人(英語ネイティブ)ふたりに、この表現が通じなかった。
ふたりとも、英語としてそれを聞いたことがないというので、わたしとしては考えてしまった。ならば「新生児で、育てることができない事情がある子供を預けに行く小さな部屋のような制度をなんというのか」と尋ねると、アメリカにはセーフヘイブン法というものがあって、事情を詮索することなく、病院などで赤ちゃんを受け入れてくれるのだという。困っている親はセーフヘイブンのマークがある病院等へ出かけるが対面での手渡しが原則で、どこかに子供をおいて無言で去るわけではない、と。
ああ、なるほど、それならば単語を聞いたことがないのも当然かもしれない。
ネイティブに聞いたことがないと言われると、自分が調べて知識として得ていたつもりになっている単語と、いだいている自信が、がたがたと崩れそうになることがよくある。だがこうして話を聞いてみると、なるほど制度が違えば対応するはずの単語の知名度がどちらかの側で低くても、それは無理からぬことだ。
わからなかったら、とことんその場で尋ねてしまうにかぎる。それが今後の知識となっていくはずだ。