いきなりきついことを書くが、オカミ主導で何かを流行らせようとして、それが好意的に受けとめられた上で流行ることは、ほぼまったくないような気がする。
ハッピーマンデーは迷惑であるし(慣れ親しんだ祝祭日を動かされた気分的な問題のほか、月曜日に通常の用事をこなすことを習慣づけていた人にとっては、動ける日が数日とはいえ減ることになる)、なにかと話題になるサマータイムは、実現したらはた迷惑だし、その必要性も疑問だ。たとえば2020年の東京オリンピックではサマータイム適用や休日設定の移動などで融通が利かないと「競技時間が暑くなったり道路封鎖の許可が警察から下りにくくなる」といった自分中心の意見を述べる政治家もいると聞いている。「世の中の時間をそのままで競技をおこなう時間を朝か夕方にする」とか、その期間だけ「休日を動かすのではなくて平日を休日扱いできるように警察と相談すればいい」という柔軟な頭がないようだ。自分が1ミリ動いてみようかと思いつかず、他人に5メートル動いてもらうほうが思いつきやすいのかもしれない。
さて、プレミアムフライデーである。いかにもオカミが考えそうなことだ。自分たちはこんなにいろいろ考えて、提案しているんですよ、と。狙いとしては「午後の3時に仕事を切り上げておいしいものを食べたり旅行をしましょう」だそうだが、月末の最終金曜日にそんなことができるほど、いまの日本は余裕があるのか。あるとは思えない。案の定、この話に乗っている(ように見せているだけかもしれないが)企業の多くはデパートや外食、中食、旅客業だ。いまのところ、プレミアムフライデーに協賛してロゴマークの使用許可をもらうと公式サイトに企業名をリンクしてもらえるというたったそれだけのメリットのようだ。もしくは、協力しているという態度をとることそのものは不本意ではないが、実際に何か行動を起こせるか、あるいはビジネスとしてメリットがあるのかという半信半疑な思いを感じている会社も、あるように思える。
小売り、食べ物、旅客…これらは、多くの場合「女性を」ターゲットにしていると思って間違いはないと思う。だが世の中で会社という勤務形態で働くのは、日本の場合は圧倒的に男性が多いはずだ。男性に午後3時に仕事を終わらせて遊んでもらおうと言っても、どうせそれが初回から実現するはずはないから、女性(もともと忙しくない人が層としては厚いであろう存在)にターゲットをしぼっておけば、格好もつきやすいし、行動としても形になりやすい。その日は手間をかけた夕食作りではなく、家族みんなで外食またはお持ち帰りしてくださいとか、普段はできないような体験レッスンでもいかがですかと、初回はまずそういう訴え方が無難だろう。
さてこれ、定着するのか…? 無理やり定着させるのか?
わたしとしては、月のある1日だけを祭りのように設定するよりも、普段から強制的に労働時間を削減させればいいと思う。たとえば8時間労働と言わずに「多少なら副業してもけっこうだから、1日数時間まで、あるいは週に何十時間を限度に、それだけ労働したらすぐ家に帰って」とか(笑)。それくらいやってみろと思う。しゃれたカタカナで制度だけ作っても、人はついてこない。いや、ついてこられない。
庶民目線で企画を考える人が、もっと増えてほしい。