Huluで以前から、アメリカ本国とそれほど時間差なく12 Monkeys(トゥウェルヴモンキーズ)を配信していたのは知っていたのだが、あまり映画版のほうが印象的ではなかったことと、あの話をどう膨らませたらテレビシリーズになるのかさっぱりわからなかったため、何ヶ月ものあいだ見ずにいた。そうこうするうち、本国で第二シーズンが終わり、日本で第二シーズンの放映がまもなくはじまるというころになって、最初から13話ずつ計26話を、週に1〜2作品のスピードでおいあげ、本日ようやく最終話を見終えた。
2044年の未来から、男(ジェームズ・コール)が2015年にやってくる。その男性を送りこんだ女性科学者(ジョーンズ)と、2015年現在で主人公と知り合う女性主人公の医師カサンドラ(通称キャシー)を主軸に、そしてコールの少年時代からの悪友であり命も預けられるほど信頼し合っている男ラムゼを横糸にして、話は複雑にからんでいく。
ウィルスが世界を壊したのだからと、コールは何度でも、その元凶となる人物を殺害するために未来と過去を往復する。だが、未来は少ししか変わらない。ウィルス蔓延が数年ずれたりする程度だ。未来からコールを送りこんでいるジョーンズは、とりまく周囲の事象が自分の記憶(コールを送りこむ以前からのもの)からどう変化しているかを比較することができるが、それ以外の人物らは、ジョーンズが説明をしないとそれらを認識することはない。つまり「コールとジョーンズを除いては、まっさらな未来が新たに作られている」という状況になる。ごく数回の事例では、ジョーンズにも認識できないほどの大変化が起こる。女性主人公であるカサンドラは初期のころに何度か死んだが、コールが過去をやり直したことにより生きながらえたのみならず、事情でタイムトラベルをするきっかけができたことにより、深く理解し合える間柄となった。
初期のいくつかのエピソードにおいて、コールは淡々と過去を変えることに徹する男だったが、やがて何をしても少しか未来が変わらないことなどから疑問を深め、任務よりも人間らしくふるまうことのほうに抗いきれない思いをいだくようになった。死ぬはずだった人物ならば見殺しにせよと言われても助ける、などの積み重ねだ。判断能力やサバイバル能力はそのままであれ、気持ちはすっかり温和になった。
いっぽう、事情が生じてコールと同じ非情な任務を引き受けることとなったカサンドラは、医師らしい人間味のある考え方から、殺伐とした機械的な行為をいとわない性格になっていく。そのことを、自分が彼女を巻きこんだからであると苦しむコール。思いあい、いつもそばにいながらも、いさかいが増えすれ違っていくふたり。
第二シーズンになったころから、ウィルスの蔓延は世界を壊すきっかけや事象のひとつにすぎず、さらに根本的で、大きな問題があることがわかってくる。敵は過去に向けて使いの者を複数送りこみ、彼らはその使命をなし遂げようとしていた。コールらは、それら過去に使わされた者たちの行方を追うことに。
やり直された過去があるため、そして普通の人間とは異なる驚異の回復力を持った人物らが出てくるため、何話か休んだ順レギュラーの役者が出てくると「これは死んだような気がしていた人物だが、死んだと思われていたが生きていた話なのか、それとも過去がどこかで帳消しになって死ななかった人なのか、あれどっちだったっけ」と、頭が混乱する。記憶の整理がけっこうたいへんである。
頭はかなり混乱するが、登場人物らの設定がよく作りこまれていて、うならされる。すべての時代を時間の順序とは無縁に一度に理解できる能力を持つ登場人物が何人か出てくる。それらのひとりで、初期からずっと登場しているジェニファーの役どころ、そしてそれを演じている女優さんがすばらしい。ときどき「主役はジェニファーだ」と思えるほどの迫力である。
第二シーズンの終わり方が、かなりよかった。本国では春に第三シーズンが放映開始のようなので、ぜひHuluもがんばって、追いかけ配信をお願いしたい。