まぁ、ほんとうに、変な人が多い時期である。うちの認知症義母などもご多分にもれずで、温度が高い日がこうして数日つづけば、何か頭にスイッチがはいってしまうらしく、寝ないし、歩きまわるし、我慢できずに「寝ろ」と言いにいけば、わけのわからないことを言い返して威張りちらす。曰く「何がどうなっているかわからないから、どこにいけばいいかわからないから起きているんだ、眠くはない」だそうだ。寝ればいいんだよと、こちらもぶっきらぼうに答える。この数年でだいぶ感情の起伏は抑えられてきているが、たまに、どうしようもなくなる。
寒い時期は布団からできるだけ出てこないが、暖かければすぐこれだ。あまりにうるさいので明日の朝までかけ布団を減らすことにした。動きまわっている気配が消えない。様子を見にいかなければ、人を呼ぶような意味合いの言葉を、ずっとしゃべっている。
認知症というのは、数年でぐぐんと悪化して、最後のほうは体にまったく命令がいかなくなって寝たきりになり、死んでいくものだと聞いている。医師もケアマネさんも、わが家の義母は足腰が弱くなった程度で症状がさほど進んでいないと、驚いている。もう東京にひきとって6年近くになるが、誤解を承知で書くならば「あと何年ここ(この地上)にいるつもりだろう」という言葉も浮かぶ。きつい人間と思うなら思っていただいてけっこうだ。きれい事を書くつもりはない。
わたしが広島と岡山にいたあいだ、不思議と義母は騒ぎを起こさなかったという。それだけは、よかった。ほっとした。
もし今日のようなことが、見る人間がひとりしかいないときに起これば、かなり気が滅入るし、対応できないかもしれない。
それにしても、面倒とか、腹が立つとかいう気持ちの前に、やはりだんだんと「気味が悪い」。何度寝ろといっても、布団に連れていって寝かしても、しばらくすると這ってでも玄関に出てきてひとりでしゃべる。これはもう、ほとんどホラー映画の世界だ。ああはなりたくないが、わたしとて将来はどうなるかわからない。