出会いは思いがけないところにあるが、別れもまた、けっこうある。自分の側だけが親近感をいだいて「いつもそこに行けばある」と思っている店が急に閉じていたり、なんの根拠もなく「ずっとそこにある」と思っていた店が、大きな話題になることなく、いつの間にか消えてしまうことも。
今年の春に、千円カットの店が短期間の貼り紙だけで消えていて、あれはさすがに困った。そしてさみしかった。髪をカットする店は、そうそう見つからない。ようやく代わりを見つけるまでに何週間もかかった。それほど遠距離にお住まいの美容師さんではなかったし、いつかどこかですれ違うことがあるかもしれないが、客としては会うことはないのだ。
さて。残念ながら、今日もひとつ。
数年前、自分がFacebookで「この店、まだあったんだ」と、懐かしく書きこんでいた店が、過去の同じ日に書いた内容が表示される機能を通じて、目の前に出てきた。宮崎県で何十年かつづいていた和菓子店だが、洋菓子や、和洋折衷の試みもおこなっていて、わたしが親しくしていた店主さんは、二代目か三代目さんだったような気がする。
お取り寄せでの数回の御縁のほか、東京に催事でお越しの際には実際にご挨拶をしたこともあった。実は一度は挨拶せずに買い物だけして帰ったところ、それを書いたネット上の日記が店主さんの目に触れて「楽しみにしていたのに、声をかけてくれなかったんですか」と、嘆きのご連絡をいただいたこともあったため、二度目の御縁の際には、勇気をふるって声をかけたものだった。
その店の名を見て、ふたたび検索した。食べログには掲載が残っているようだったが、最近のものがない。心配でさらに検索すると、ネットでは地元の人が「なくなっちゃったの?」とか、「○○店はなくなっても、□□店とか、本店があるから、実際に出かけてみようか」、「いや、全滅だった、ぜんぶなかった」…ということらしかった。廃業されたのだろうが、地元の方でも事情をご存じないとは、なんともさみしいことである。
フルネームを知っている個人同士ならば、将来どこかで、Facebookのような存在を通じて連絡を取り合えることもある。だが相手との関係が「よく行く店の人」であれば、普通はちょっと、相手のフルネームを知っているとはかぎらず、まして、ほぼ間違いなく「相手はこちらのことをほとんど知らない」。
人も、店も、一期一会くらいの気構えで、丁寧にお付き合いしていきたい。