偶然とはいえ、なぜこんな「冒頭だけを考えれば似ている映画」を2本も連続で見てしまったのかと、驚いた。
まずはおとといだったか、わたしが家族に、Netflixにある「ザ・ゲスト」を見ようと誘った。これはこところ急に有名になってきたイギリス俳優ダン・スティーヴンスが2014年ころ主演した映画で、息子が戦死した悲しみにうちひしがれた母親のもとに、同じ部隊にいた者ですがと、ダン・スティーヴンス演じるデヴィッドが現れるという話。
すぐ去ろうとする彼に、息子の友達ならばひと晩だけでもと宿を提供する母。最初は疑いながらも自分の職場の愚痴や世間話をする父。そして彼は、どんどんと家族内での距離を詰めていく。とくに思春期の息子ルーク(戦死したケイレブの弟)は、彼を親友のように感じるまでになった。
ところが周囲に不穏な事件が増える。彼の正体を探ろうとする娘(ケイレブの妹)と、彼に味方したいが姉とのあいだで気持ちが揺れるルーク。だが、またたく間に、事件は誰の手にも負えないほど大きくなっていく——
これは、よい意味でアメリカ映画であり、努力が成功しているとは言いがたいが荒っぽいストーリーに理屈をつけようとしているだけ、娯楽作品と呼べる。そこそこの仕上がりである。やはりダン・スティーヴンスはこういう役が合うようにも思うが、テレビ番組「レギオン」で見たときの印象よりも圧倒的な筋肉。端正な顔立ちで当たり前のように繰り出す暴力、こういう人は実在したらけっこう怖い。
さて、もう一本は、家族がiTunesでレンタルして期限が来てしまうから早く見ようと言っていた日本映画「淵に立つ」である。
浅野忠信が演じる男が昔なじみを訪ねて町工場にやってくる。いちおう礼儀正しいのだが、対応した昔なじみの男(演: 古舘寛治)は、不自然なまでに厚遇。仕事を手伝わせ、しかも住み込みでいいという。妻(演: 筒井真理子)は驚く。赤の他人をその日から突然に泊めるとは何事か。しかも家には小学生の娘もいる。
礼儀正しい見た目の男だが、夫婦には少しずつヒビがはいり、そしてあるとき、決定的なことが起こって、男は姿を消す。その日を境に一家は苦悩をせおいこんだ。そして8年の歳月が流れ…
こちらはもう、まったくもって「娯楽」ではない。後味も悪いし、謎解きとか理屈とか、そういったものを掘り下げるつもりは、監督(兼脚本)の深田晃司には、なかったらしい。いったい何がどうなって、理由はなんなのか——そういった、観客へのサービスとして少しは考慮しそうな流れが、この映画にはない。映画にそれらが必ずなければいけない…というわけではもちろんないのだが、あまりに救いがない。
男がひとりで訪ねてきて家をめちゃくちゃにする話だが、人に勧めるのは「ザ・ゲスト」のほうが無難かもしれない。