この数日、1日何回か検索しても見つからなかった情報がある。漠然としすぎていてどう検索していいかわからなかったのだが、もう「もし検索の世界に”中の人”がいて、わたしの検索文章を見て笑ってもかまわない」と、開き直ってざっくりした文章で打ったところ、それらしき話が出てきた。
わたしが覚えていたのは、こういう話である。おそらく子供向けにやわらかな文体で書き直して昔話のように仕立てていたのだと思うが…
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ある坊さんが患って床に伏していると、使いがふたりやってきてその坊さんを従え、死者の国(地獄)へ案内する。なんで自分がこんな目に、と僧は納得がいかない。彼は名声のある行基をねたんでいたが、道中で目にした光景(立派な橋が作られつつあり、その向こうには建物がある)を地獄の使いに尋ねれば、立派な僧の行基が亡くなったら住んでもらう家だと答えられる。ますます坊さんは腹立たしい。
地獄の役人(閻魔?)の前に連れて行かれて、男は連れてこられた理由と、これからくだされる罰を告げられる。熱く焼けている鐘にしがみついて焼けただれるとか、そういう死に様を何度も何度も体験する罰だった。ときおりお経の声が聞こえてくる時間のみ鐘は冷えて、坊さんは生き返る。そのくり返しだった。
そのような死に様を何度も体験して、やっと現世に送り届けられたとき、坊さんの周囲では9日間が経過していた。坊さんはまじめに修行をして立派な僧になった。ちゃんちゃん。
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こういう話なのだが、ある意味でありきたり。だがせっかく「行基は立派」というのが強調されているのだから検索キーワードに加えてしまいたくなるのだが、するととたんに難しい資料のようなものがたくさん検索されてしまう。
では坊さんが受けた罰を「無間地獄に放りこまれる」とでも打てばいいのか、あるいはたんに「坊さんの臨死体験」とすればいいのか、いやいや、やはりキーワードの「行基」は外せない…な〜んてことをやっているうちに、数日が経過し、自分のイライラが最高潮。
そこで、わたしは「検索の世界に”中の人”がいて、わたしを笑ってもかまわない」と、ついに決断した。
検索ワード: 行基をねたんで地獄に落ちた人
すぐさま、こちらさまの貴重な情報が → 金偉のホームページ――日本古典文学翻訳 2010.12.10 『今昔物語集』の地獄・冥界説話に関する考察
日本霊異記、今昔物語などに、この人物「智行」さんの話があるそうである。
最初から、気持ちに正直に入力していればよかったが、数日かかってもわかってよかったと思う。
次なる謎は、いったいこの話をややかみ砕いて子供向け書物に紹介したのは誰で、わたしの持っていたどの本だったのか、ということだが、これはおそらく、調べるのに時間がかかるだろう。図書館で借りて読んだなどではなく、自分で家に持っていた本だったような気がしているが、何十年も前の本は、すでに手もとにない。
いつか、それも思い出せる日が来ることを願って。