アフレック兄弟の地味そうな弟ケイシー・アフレック主演の映画。正確には地味そうなのではなくじゅうぶんに個性的でよい役者なのだが、兄のベンが派手すぎて…。
2016年アメリカ映画。かつて住んでいた土地を離れて車で1時間ほどのボストン住宅街で孤独かつ無愛想な修理屋をしていた男性リーのもとに、兄が倒れたとの連絡が。到着してみるとすでに兄はこときれていた。悲しみに打ちひしがれるまもなく、病気の発作を懸念していた兄自身の手により、葬儀の手続きや、自分が甥(兄の残された息子16歳)の後見人となるように資金の段取りまでつけられていたことを知り、衝撃を受ける。
幼いころから知っていた甥に、むろん愛情はある。だが彼には、その土地にいられない、その土地にいるとつらすぎる過去があった。それを知っていてもなお彼を息子の後見人に指名した兄の思い。ひとまず数ヶ月(冬季を避けて土葬したいとする事情により)の猶予期間を甥と過ごし、その土地にふたたび暮らしていく男を、アフレックが演じる。
地味ながら、よい作品だった。最初のうちはケイシー演じるリーの役柄が理解できず、フィクションながらも嫌な設定の人物だと思ったのだが、よく考えると主演だからと同情されるべき人間、愛されてしかるべき人間に描く必要はないのだ。そして中盤から、甥との会話や登場人物らの本音のぶつけ合いを通じ、描く世界を飾ろうと思っていない姿勢や、登場人物の誰かが自分の生活を無理にあきらめて美談にしていくような構成でないところに、すっきりしつつもぬくもりのある思いが残った。
ケイシー・アフレックといえば、かつて見た「ゴーン・ベイビー・ゴーン」も素晴らしく、柔軟になれない男を演じさせたら秀逸な役者と思う。個人的には、ちょっとナルシスト的な役柄の多い兄のベンよりも、こちらを応援したい。