田舎に暮らす高齢の母が、最近はあれこれと「これは体に合わなくなった」だの「何々は匂いが嫌」だの、歯に衣着せずにズバリと表現することが増えてきた。以前はもう少しやわらかで、自分は飲み食いできなくても(人からもらう分には)家族の誰かが消費するからと、何を送ってもありがとうと言ってきたのだが、最近はどうせ何かをもらうならばズバリと言っておこうという気持ちになったらしい。
乳製品は牛乳そのものはたしか飲まなくなり、乳酸菌飲料や、牛乳を使った加工品(たとえばアイスクリームやプリン)などは、摂取するという話だっただろうか。
母は体調が悪ければそれに対して何でも対応する薬が存在すると思うような人であり、何においても神経質なところがある。だが実際には、体調不良のすべてに薬で対抗しようとすることほど困難で、人の気力を奪う作業はない。ある程度までは、何事にもおおらかに考えて生きていく気の持ちようが大切だ。その上で、どうしてもというときだけ医者に薬を処方してもらえばいいのにと思う。
さて、今日「大人のための粉ミルク」が話題らしいとネットで読んで、原材料や価格を調べてみた。体調不良もしくは顎や口の不調で食事がとれないことがあっても、液体で栄養が補えるなら母によいかと思ったためだ。
該当する商品は、森永、雪印、救心製薬などが出しているようだ。ある程度の単位で通販でまとめ買いすることが前提で、気軽にお試しするようなサンプル的な商品は見当たらなかった。初回からけっこうな金額になる。
そして、成分と原材料。てっきり脱脂粉乳にビタミンと甘さを添加するくらいかと思ったのだが、原材料を載せてくださっている人の画像を見たかぎり、かなりさまざまなものが含まれていた。
まず油脂。脱脂粉乳でコクがなくなるのだから、なめらかさを加えるには油脂(パーム油など植物性)が必要ということだろう。そのほかに食物繊維、ビタミン、乳酸菌、糖類など、ほんとうに多くのものが使われている。関心のある方は「大人向け粉ミルク 原材料」というキーワードで検索されたし。
ただでさえ気難しくなっている年代で、しかも食に関してはかなり保守的な母であるので、お試しサイズで味を気軽に試せるのでない以上、これはすすめられないと感じた。
大人向け粉ミルクに、なぜ需要があるか。
わたしが思うに、健康への不安から、日々少しずつよさそうなものを摂取する習慣をつけたい人が多いのではないかと思う。深刻な問題(たとえばアレルギーなど)でごく一般的な牛乳または動物性の乳が摂取できないないならば、それが粉末となってもリスクはほぼ変わらないはずだから、粉末だからと選ばれることは考えにくい。理由はおそらく、もう少し軽いものであるはずだ。
かならずしも健康志向とはかぎらない場合——もし普通に冷蔵で売られている牛乳(もしくは牛以外の動物性の乳)を飲んで腸への刺激が不安がある(乳糖不耐性)、もしくは冷蔵で売られている商品を開封後にすぐ消費できないから日持ちする粉製品がいいとお考えの人がいるとしたら、コストだけを考えるなら、牛乳もしくはなんらかの乳を小さめの容量単位で買ってきて、少量のヨーグルトなどを溶かして飲んだほうが、高価な粉末製品より手軽で安上がりではないかと思う。ヨーグルトを混ぜることで乳糖は分解するので、お腹がごろごろする危険性は下がるし、何より成分は「乳とヨーグルト(もしくは自分が選んだ混ぜ物)」のみであるから、シンプルで安心だ。
今後も「大人向け粉ミルク」には注目していきたいとは考えるものの、価格の高さと原材料の多さは、もう少しなんとかならないかと、ひそかに改善を期待している。