たまに横断歩道を渡ろうかというタイミングで救急車が近づいてくることがある。サイレンもかなり大きいが助手席で係員がマイクを通じ「緊急車両です、道を空けてください」と言う声も、けっこう緊迫感がある。人はそれを聞いて何をするか…もちろん、道をまだ渡っていないのであれば、渡らなければいいのである。通り過ぎたら渡ればよい。
ところが、である。このとき周囲を見ていると、割合としては2〜3割(10人いれば2人前後)だろうと思うが、あわてて渡ってしまおうとばかりに道に出る人、または出そうになる人がいるのだ。道の半分まで進んでいる人ではなく、歩き出さなければよいだけの、道のこちら側にいる人たちである。あれはある意味でパニックなのだろうか。
故意ならば非常識であり迷惑だが、あの音を聞くと緊張してしまい、つい反射的に「急ごう」と思ってやってしまうことなのかどうか、ちょっと気になる。
今日は近所を歩いていて、住宅の多い場所でサイレンが複数聞こえてきた。住宅街とささやかな商店街がまじわる場所であり、建物に反響したあげく複数に聞こえたのか、ほんとうに複数なのかは、ついにわからなかった。どちらによけておけばよいのかわからずキョロキョロするうちに、自分の進もうとしている方向では音が遠ざかっていくように感じたので、そのまま歩いて帰宅した。周囲に人は多くなかったが、やはりみなさん周囲を見まわしていたようだ。
ドキリとしなければ意味がない音だからこそ緊急車両で使われているのだろうが、近くであれが鳴ると、どうも落ち着かない。