乳児はベビーカーなどを利用していることや、寝ている場合も多いため、さほど問題とはならない場合もあるかと思う。だが幼稚園児くらいの、そろそろ自分で歩きまわろうとしたり言葉による自己主張が強まるくらいの年代を、親が美術館に連れてくるというのは、どうなのだろう。
今日は上野のエッシャー展に出かけた。平日午後なので混雑はそこそこであったが、数組の子供連れ(少なくみても3組)と、たまたま館内で歩調が合ってしまったらしく、移動しても移動しても、子供の声がついてくる。お子さん連れの方も、やはり周囲の雰囲気が気になってしまうのか、どうも入館時にばらばらだった場合でも、いつのまにやら近づいて移動する傾向があるのかもしれない。とにかくわたしと歩調が合ってしまったのは、そうした方々だった。
その数組の親子連れに関して言えば、むずがって泣いているというよりも、よちよち歩きをしようとしたり、不用意に声を出したことに親が小声で注意してくるのを「自分に関心を持ってもらった」と思うらしく、なおのこと嬉しそうに声をあげる場合が多かったようだ。お母さんが抱っこしながら背中をそっとさすると、そのリズムに合わせてよくわからない言葉をずっとしゃべりつづけている子供もいた。おそらく子供なりに、不慣れな状況の中で親とつながっている事態、大げさな言葉になるが絆の確認のような意味で声をあげてしまうのかと思う。
小さい子供のいる方に、美術館に来るなというつもりはない。そんなことはたいへん失礼だ。だが入館している人々の「静かに見たい」気持ちも、ある程度は尊重してもらえないのか、両者の中間地点はないのかと、悩む。
こうしたことにいちいち気持ちを乱されてはいけないと、耐えようとしたのだが、さらに途中で、修学旅行の中学生らと遭遇してしまった。そちらは係員の誘導(展示物のケースに手を触れるななど)を意に介さずに自分たちだけの世界にはいっていて、これもまた心を乱された。見るまい、気にすまいと思ったのだが、余計なところに神経をすり減らした。
かといって、美術館の脇に短時間のキッズ預かり所などを設置するのも、費用の面で難しいのだろう。そして下手をすると、そういう場に子供を預けてまで美術を見ようというのかと、中傷する人が出ないともかぎらない。難しい話である。