January 23, 2005

30年という時間

日経新聞の22日夕刊に、小野田寛郎さんの帰還から30年に寄せた短いコラムが載っていた。小野田さんとは、戦後30年近くにわたり、ルバング島でひとり戦っていた男性だ。

小野田さんについては書籍も多いが、一番コンパクトにまとまっている紹介がこちら。
小野田寛郎 - ffortune.netのサイト内、戦後の人物紹介。

物心ついたころ、戦争というのもよくわからず、昔こわいことがあったという程度の認識でいた。ある日テレビに横井庄一さんという人が現れ、ジャングルにずっと住んでいたということで、何日ものあいだ世間はその話でもちきりだった。親にたずねると、子供にもわかりやすいようにだろうが「誰にも会わず、穴みたいなところで暮らしていたのだ」と説明された。防空壕みたいなところとも言われたが理解できず、防空壕とはなんだろうとまた新たな疑問と問いかけをくり返した。そんなあいまに、とにかく横井さんという人はとても寂しい状態が長くつづいた人なのだと思ったのを覚えている。

そしてその数年後に小野田さんが帰ってきたときには、もっと寂しい人がいたのだと、かなり驚いた。そのころには防空壕もわかるようになっていたし、飛行機でもどってきた生中継の映像を、友達の家のテレビで見た記憶も残っている。

横井さんは数年前に他界されたが、ひっそりと受け身に、社会に順応しながら生きたように見受けられる横井さんとは対照的に、小野田さんは体験を活かしつつ、生を積極的に生きていらっしゃる模様。

社会から隔絶されたら、わたしは数ヶ月さえも無事でいられるかどうかわからない。第一に精神状態が怪しくなりそうだ。どんなに大きな話でも、自分の身に重ねて考えると安っぽい感傷になってしまいがちだが、横井さんや小野田さんのことは、何とくらべていいのかわからないほど、どんな想像をも超えた話のひとつだと思っている。


参考URL:
Wikipedia - 横井庄一
Wikipedia - 小野田寛郎
財団法人 小野田自然塾

Posted by mikimaru at January 23, 2005 02:44 AM
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