パンはできるだけ自家製の酵母で焼いている。冬で酵母の活動が遅い場合や、何か事情のある場合には、市販の複合酵母「パネトーネマザー」を補助として混ぜている。
今日、ふとしたきっかけで「もしかして mikimaru.net は、自家製酵母という単語では検索対象となっても、天然酵母という単語では人がたどり着けないだろうな」と気づいた。世の中でメジャーなのは「天然酵母」という言葉だと思う。納得ができていない単語を安易に使ってまでお客さんを伸ばそうとは思わないが、小さなことにこだわりすぎるのもよくないかと、ちょっと考えてしまう。人にとって「天然酵母」という単語はとても魅力的なのだから。
ドライイースト、生イースト、各種のイーストで言う「イースト」と、「酵母」は同じ言葉だ。日本ではカタカナと漢字で雰囲気を分けて使い分け、人によっては善か悪かのようにきっぱりとした考えを持っているらしい。だが違いは、自然界にある酵母をどう(何で)培養したかだ。培養するために投与する餌が天然由来であったら「酵母」というのが、実際のところ。
だが、培養しておいて「天然」を名乗るのは、納得がいかないこともある。けっきょく培養したものではないかと、わたしは思う。
たとえば天然ウナギと名乗っておいて、生け簀で天然の餌を与えつづけていたウナギの蒲焼きが(もしも)あったら、その言葉「天然」に納得できる人は、少ないだろう…。稚魚から育てたのではなく天然の環境で大きくなったものですよと言われても、やはり「とってすぐ食べるのでないなら、天然じゃないだろう」と思いたくなる、それと同じような感覚だ。
それともうひとつ、天然酵母と聞くと、圧倒的なシェアから「ホシノ」というメーカーにイメージが直結してしまうのも、一部の人が「天然酵母」という表現を避けている原因ではと思う(*1)。わたしはさまざまなフルーツやヨーグルトでパンの酵母を作ってきたが、同じような立場の人たちは「自家製酵母」とか「自然酵母」という表現を好む場合がある。何日もかけて瓶の中でぶくぶくさせた可愛い液体を、メーカー品と一緒にされてしまうのは哀しい――たとえそのメーカーがとても人気があって、好印象をもたれているとしても。
自家製酵母のほうがメーカー品の天然酵母より偉いとか美味しいとか言いたいのではなく、「天然」という魔法のような言葉を、人はもう少し丁寧に扱ったほうがよいのではと思う。「天然」への過信というか、無条件にありがたがるような姿勢がもしあるなら、ちょっと待ったと言いたい気分なのだ。
(*1)
メーカー品の天然酵母としては、ホシノのほかに「ako」や「白神こだま」がある。
それから、ちょっと変わり種としては、大阪府の楽健寺というお寺さんに分けてもらって自分で種継ぎをしながら育てていく「楽健寺酵母」というのもある。上述のメーカー品とは違い、これは粉末ではなく生のパン種で送られてきたものを自宅で材料を継ぎ足していく方法をとるようだ。
確かに 天然酵母という 言い回しは、不適切ですね イーストという言葉を 酵母と言い出したのは良いと思うけど、確かに自家製 と メーカーの酵母は ちゃんと分けて考えて認知されるべきです。…自家製って すごく素敵(>_<)
言葉も 自分自身できちんと考えて使わないと どんどんまわりの思うが侭だ〜 と改めて 思いました。
graceさん、いらっしゃいませ。
酵母作りをされているんでしょうか。楽しいですよね。
わたしは去年の秋からずっと大事に使ってきたものが、そろそろ終わります。また何か作ろうと思っています。
Posted by: mikimaru at April 28, 2005 07:59 AM日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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