October 04, 2005

「TVのチカラ」 - (2005年10月03日)

3時間の特番を組んでおいて、これはないだろうと思う。半分の時間を割いて事実上の目玉となっていた上智大生の殺害放火事件が、あまりにも残念な扱い。途中で「あれ、おかしいな?」とは思ったのだが、見るのをやめるわけにもいかず、ついつい見てしまった。

番組内容は、こちら → TVのチカラ SOSファイル

最初にわたしの疑問を書いておくが、番組はこの事件を「投げて」いるのだろうか?

番組予告や随所の匂わせ方から、この事件に何か重大な新発見があったのかと思ってしまった。とすれば、情報提供をしようという意図で番組を見る人はほとんどいないだろう。経過と結論を見たいと思ってチャンネルを合わせる人のほうが圧倒的に多いはずだ。番組の最後で、今回の特集が被害者のご家族を約1年に渡り取材してきた記録だとわかった。そしてとってつけたように「あなたの情報をお待ちしています」と、しめくくった――。

最初から「これまでの経過」として見せるべきなのだ。ご家族、とくに自分たちを責めるあまりに記憶を掘り起こそうとアメリカにまで渡ったご夫妻の気持ちは、センセーショナルな予告がなくてもじゅうぶんに放映の対象として成り立つだろう。新たな発見があったかのように匂わせて視聴者を増やそうとは、あまりにも安易。例えは悪いがテレ朝お得意の川口某探検隊とどこが違うというのだ。

被害者のお母様は、娘さん宛に男性からかかってきた電話のことをご自分がきちんと記憶していればと、それが犯人だったかもしれないと、それを思い詰めるあまりに、ご自分の記憶に肉付けをしていたことがわかった。アメリカでその事実があきらかになったとき、ご両親はうちひしがれながらも、ひとつの可能性がこれでつぶれたから、ひとつひとつをつぶしていこうという強さを見せた。そのことひとつとっても、とても一般人にはまねができないことだ。だが番組宣伝の内容と当日の編集姿勢は、そのご両親に失礼のないものだっただろうか。


最初に書いた、わたしが途中でおかしいと思った、という点について:

激しい雨と放火で物的証拠がほとんど何もない状況、新たな目撃者も証言もない中で、ご両親があとから(当時も多少はそう思われていたのかはともかく)ストーカー説に大きく傾いていったのではないかと思える部分が何カ所かあった。たとえば、不審な男につきまとわれていたという事例は「あとから思えばそうだった」という程度の、1〜2回あったことの積み重ねだったと思えるのだ。少なくともあの番組を見た範囲では些細な事例だ。被害者のご家族がどう思われたかはともかく、編集がこれでは「全体が大きく傾いている」と判断するのが普通だろう。

そして番組最後のほうはもう完全に、娘さんに一度だけかかってきた電話の男性について名前を思い出しさえすればそれが犯人だという、確定したナレーションまではいってしまった。そんなことはありえない。常識的に考えてそれはあきらかだ。


この事件の犯人は、つかまってほしい。だがいつも何気なく見ているこの番組には失望した。
(だがまたきっと見てしまうのだろう…)

Posted by mikimaru at October 4, 2005 07:36 PM
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