March 19, 2005

通院のこと (3)

そして3月14日の朝がやってきた。

そのころには痛みのため布団から完全に起きあがるのに二十秒もかかって、着替えをするのも数分以上かかる状態になっていたと思う。8時半くらいから身支度を整えていると(近所の医院なので恥ずかしくない程度の身支度で問題ない)、髪をどうにか結わえて9時10分前になった。普段なら10分以内にらくらく到着できる医院だが、おそらくいまの足では到着して9時過ぎだろうと、すぐに出発。

狙いは痛み止めだった。その医院は毎日ほぼ3名くらいの医師がいるが、何曜日にどんな顔ぶれがいるか、だいたい頭にはいっている。月曜日で「内科の用事で」と言えば、どの先生にまわされるかだいたい見当がついていた。受付で症状記入欄に文字を埋めるのも、この半日を30分刻みで待ち続けた甲斐あって、すらすらと文章が浮かんできた。ひどい口内炎があり、疱疹のような痛いものが全身にあること。悪寒と吐き気もたまにあること。とにかく納得してもらって痛み止めをもらい、家に帰って寝たかった。

混雑しているのか、いつもより少し呼ばれるまでに時間がかかった。やっと呼ばれたのはいつもの内科の先生の部屋だった。少し説明をしかけて、面倒になって左手を見せると、驚いている。

水疱瘡そっくりだということ(だがわたしは小学生で経験済み)、それがひどく痛くて手を動かすのもたいへんでうめいていること、それだけを確認すると、隣の部屋の先生にも診てもらおうということになり、わたしは部屋をいったん出て廊下の長椅子へ。

数分後、連絡を受けた隣の部屋の医師に呼ばれた。たまにしかお会いしたことのない先生だが、さきほどの医師が(セクハラと間違われたくないという考えからか?)できるだけ体を見ないようにしているらしいのとは逆で、けっこう大胆に(もちろん女性の看護師も一緒に)あちこち見ては「水疱瘡そっくり」と驚きの声をあげる。

心の中では「何にそっくりでもいいし、原因なんかどうでもいいから痛み止めをくれ、痛い、痛い」と叫んでいた。

体温計が出てきたので、脇に入れると、なんと8度8分と言われた。寒気がするのは当然で、熱があったのだ。体の痛みのことばかり考えて、熱を計ろうなどとは一度も思わなかった。

数分間その先生とお話をして、痛み止めはまだかと思っていると、事態は意外な方向へ。
「水疱瘡は、やったんですね?」
「はい、小学生のとき」
「水疱瘡をやっていなかった人が大人になると、帯状疱疹というのになることがあって……」
「いえ、それもたぶん、医師の正式な診断ではないんですが、やってます」
今回の痛みにとてもよく似ていて、体の左半分に疱疹がたくさん出たことがあったのだが、会社が忙しくて医者に診てもらうのが面倒で1週間我慢したという、いまから思うと命知らずな体験をしたことがある。それを話した。
水疱瘡も帯状疱疹もやっていて、それで今回は全身にこういうのが出るのは、かなり珍しいことのはずだ。その医師もそれは認めつつ、万が一に全身の帯状疱疹であれば、入院して1日3回の点滴をするとよく治るのだと、電話をかけはじめた。

電話をどこにかけているのだ、わたしの鎮痛剤は、いつ、何時にこの痛みは楽になる? ――鎮痛剤への希望が、どんどん遠のいていく。
そして、区内の大きな病院にいる皮膚科の先生が電話に出ると、目の前の医師は言った。
「いまから行かせますので」と。そして電話を切るとわたしに「あちらの病院なら、必要ならその場で入院もさせてくれますよ」と。

そして紹介状を書いてもらい、わたしは医院を出た。家族に電話をすると、一緒に出かけてくれると言う。なりゆきによってはそのまま入院ということになってしまうと伝えたとき、自分がとても心細いことに気づいた。入院は一度もしたことがない。大きな病院に自分の用事で出かけたこともない。

たった10分くらいだと思うのだが、電話をかけたコンビニの中で迎えを待っているあいだが、とても長く感じられた。この段階で午前10時30分近くになっていた。

このあと、その大きな病院でいくつかの検査と、皮膚のサンプル摘出手術を受けるのだが、それはまた (4) で書こう。けっきょく鎮痛剤らしきものがわたしの口にはいったのは、午後2時くらいだった。まだ道のりは長い。

Posted by mikimaru at March 19, 2005 01:00 AM
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