March 17, 2006

映画:リチャード・ニクソン暗殺を企てた男

2004年アメリカ映画。
日本語の公式サイト - The Assassination of Richard Nixon
IMDBの情報 - http://www.imdb.com/title/tt0364961/

これ、ご覧になった方いらっしゃるだろうか。
ショーン・ペンの強面の顔つきや普段の役柄と映画のタイトルを合わせて考えると、一匹狼の市民が何かに憤慨して大統領でも暗殺したるかと奮起する話――かと思うと、微妙に違う。いや、似ているようでかなり違うかもしれない。

冒頭の「何だか弱々しいショーン・ペン」に違和感を憶えつつ、描かれていくエピソードの神経質な変人ぶり(かなり病的)にイライラし、それでも最後まで見つづけてけっきょく「こういう奴、いる」と思わされる作品。犯罪は起こした本人にしか理由などわからない場合も多々あるだろうが、こうしてひとりの男の孤独と疎外感をつぶさに描かれても流れに同情などできないのだから、世の中にこんな話も事件も五万とあり、そのたびに社会は「理解できない事件」としてその話を埋もれさせていく、ということだろう。。。早い話が「現実によくある話を細部まで描いた」というだけの話、それをショーン・ペンに演じさせたからとてつもなく意味がある重い作品に見えてしまったのではとも考えられる。純粋と狂気は紙一重、重厚作品と脱力系もまた紙一重。その均衡を保っているのがショーン・ペンの存在感だ。

「それは欺瞞だ」、「自分が心を開けば相手も心を開く(だから嘘はよくない)」、「自分は真剣なのに相手にされないのは、相手が悪い」……これらは、実際に心の中で思うことはあっても、ほとんどの人は人前で口にしない。だが主人公は自分の考えを知り合い全部のところに出かけていって「自分は正しいだろう?」と、相手が返事をするまで喋りつづける。そして相手が何を言っても、納得はしない。同じようなことが何度も繰り返される。

44歳の設定だが、何かのきっかけでこう変化したのでもない限り、生まれてから高校までに友達がすべて去ったことは間違いないほどハタ迷惑な人物だ。。。行き過ぎた純粋さは、ときに狂気となる。

もっとも、アメリカの制度が間違っているとか、金持ちにだけ優しいとか、言動のひとつひとつは、納得できる部分もあるのだが――仙人でもなければ理想だけで生きていくわけにはいかない。


Posted by mikimaru at March 17, 2006 02:05 PM
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