March 26, 2006

鶏卵、そして「清潔」への雑感

2004年の暮れころだったと思うが、卵の価格高騰が著しくなり、その後、いくらかよくなったとはいっても完全にもどらないまま現在に至っている。洋菓子を作るのに卵は必需品なので、高騰に動揺した当時は「スポンジケーキやバターケーキを気軽には焼けないな」と思ったものだった。

高騰以前と以後で平均してどれくらい高くなったかというと、それ以前は卵1パック150円前後という日もさほど珍しいことではなかった。Lサイズ、LLサイズで20円増しくらい。現在では安い場合で170円くらい、通常は190円前後で、サイズにより少し前後する(これらは、ねんのため東京23区の物価と限定しておく)。

高騰の最盛期は220〜240円くらいになったような記憶だが、メモをとっていたわけではないので、多少の誤差はご勘弁。

上記は、あくまでノーブランドの卵の話だ。普段から高いブランドや、流通経路が独特な卵(お店の独自ブランドや、契約する養鶏場のもの)は、値段があまり変化しなかった。

急にスポンジケーキを焼くことになった場合にそなえて、いつも「どこどこスーパーは何曜日に卵が安い」など記憶していたつもりだが、卵が安い日に自分の予定が急にあくとは限らない。ケーキが焼けるのに卵が安くない日もけっこうあったし、卵の買い置きが少ない日に限って厚い出汁巻き卵が作りたくなったりと(←銅製の卵焼き器があるので8個入りまで作れる)、いろいろ皮肉な経験も。

そんなとき、たまにお世話になったのが、うちの最寄りのセブンイレブン。イセデリカという(鶏卵の大手「イセ食品」の関連会社)店の卵が、いつでも定額で売られていた。10個入りで208円。高騰の最中もいまも変わらず208円だ。この存在はありがたかった。

最近、洋菓子よりパンや和菓子を作る回数が増えたため、卵は普通の家庭なみにしか買わなくなった。ときどき6個入りか10個入りを1パック買えば1週間はもつ。だからセブンイレブンの卵のことは忘れ、ときどき普通にスーパーで買っていた。

今日は久しぶりにセブンイレブンで卵の前に立った。うちで足らないものは卵だけという状況だったので、ここで買ってしまえば別の店に寄る必要もない。久々に買おう、と手にとると――

高い時期に「安いから」と手にとっていた商品の、別の面が目にはいった。それは人によっては何でもないことかもしれない。だが今日のわたしはなぜか、気になってしまった。

パックの上に、いつも通りに書かれた表現
「安全 清潔な窓のない鶏舎
「安心 安心の採卵日表示
「新鮮 徹底した温度管理
(太字部分は白抜き文字)

「窓のない鶏舎」で、けっこうためらった。昨今の鶏卵事情や鳥インフルエンザの問題などを考えれば、清潔さを強調するのは企業として自然なことだろう。また、素手での調理よりも器具や調理用手袋をしたほうが安心できる(過度な)清潔志向の消費者がいることも事実で、そうした方々には安心できる表示かもしれない。だがわたしには、ためらいがあった。

卵の棚で買おうか買うまいか何十秒も考えた。けっきょく買った。以前は買っていたし、以前からあった表示だ。今日のわたしには気になるというだけのもので、安心できる卵であることは何ら疑いない。

何が引っかかるかといえば「窓がない」だ。閉塞した空間に生き物がいて卵を生むところを連想してしまう。わたしは近年話題のビル地下での野菜栽培事業(パソナが展開)も、気分としては引いてしまうタイプの古い人間だ。ほんとうの太陽に照らされない、ほんとうの空気に触れない、それでほんとうに野菜なのかと、ついつい思ってしまう。出されればもちろん食べるだろうし、きっと美味しいと言うだろう。あくまで直感的なもの、気分の問題として書いていることはわかってほしい――イセデリカさんにもパソナの野菜にも、迷惑をかけるつもりはないのだから。

もともとおおざっぱな考えを好むためか、流水で洗って清潔にした手より調理用ビニール手袋が信頼されたり、きちんとすすいだ布巾で拭いたテーブルより市販の殺菌スプレーが信用されることがあるなら、けっこう気が滅入る。それらの品々は、たしかに優れた面もあるだろう。だが団子やらおにぎりやら、素手で作って何か問題があるだろうか。調理における清潔さで、基本のうち重大なひとつは「手や使用する食材などを洗って、菌などを寄せつけない」ことであるし、つねに必要なのは調理者や関係者の「注意力」だ。特別な品や状況という「形式」を強調しても、根本は変わらない。

だが、かつて親しかった友達と電話で話していて、その人のお子さんが小さいので「最近は家の中で遊ぶ『抗菌お砂場セット』というのがあるんだって? ヘンなの」と言ったら、どちらかといえばその友達は「買う人の気持ちもわかる」という立場だったので、会話がつづかなくなった気まずい経験も。やはりこうしたことは、ときどきブログに書く程度がよいのかもしれない。

参考URL
● イセデリカ
● 株式会社パソナ社長インタビュー

Posted by mikimaru at March 26, 2006 12:41 AM
コメント

 そっちの方は卵高いですねぇ。。うちの方は妙に安いスーパーがあって、チラシにも(特売限定ながら)1パック10個入50円とかありました。怪しさ爆発ですが(笑)。

 んでも多少高いながら、かみさんはネットで自然放牧の鶏の卵を可能な限り買ってます(競争率が凄いらしく定期的に買えない)。軽度の卵アレルギー持ちながら、こちらだとアレルギーがでないらしくて。飼育環境もいいけど、餌も重要な気がする。

 清潔感については人それぞれだし。おいらも mikimaruさんに近い考え方かな。
 抗菌お砂場セットは…。子どものうちに免疫力をつけさせなきゃと考える方なのでパス。抗菌グッズとかは特に気にしないけど増えた気がする。旧来からある清潔習慣でいいと思うけどなぁ。

Posted by: tanukur at March 31, 2006 11:39 AM

tanukurさん、お久しぶりです。完全復活の日も近いでしょうか(^^)。

うちのあたりといっても、駅の反対側にあるOKというスーパーなど、一部の店は、いろいろ安いようなんです。ただ、何となく最寄りや駅前の店ばかり見てしまうもので(しかも深夜営業や24時間営業が多い)、多少はこのあたりの平均値より高く書いたかもしれませんね。

わたしがこの数年で買うようになった調理関係の衛生用品といったら、ドーバーパストリーゼというアルコールスプレーくらいかな。ドーバー洋酒貿易というお酒の会社が作っています。夏はとくに、まな板を洗って熱湯をかけたあとで、数回吹きかけると安心できます。洗った食器や食材だけでなく、食品の完成品(料理など)にも吹きかけて可となっていますが、わたしはそこまではやっていません。

ジャムやパン用の酵母を作るときに、事前に瓶に吹きかけておくのと、使用後のまな板と、それくらいかな。

Posted by: mikimaru at March 31, 2006 12:58 PM