篠田節子の作品は先日の「絹の変容」とこれしか読んでいないのだが、わたしはちょっと勘違いをしていたようだ。この人はホラー作家であるらしい。デビュー作はパニックものだとわかっていたが、それはたまたまで、ほかは別にホラーを書く人ではないのだと、なぜか思いこんでいた。
この作品「カノン」では、わたしからすると不必要なほど「死んだ人を感じる(見る)」、「不思議なことが起こる」などの描写が(とくに前半に)多いのだが、わたしはホラーだと思っていなかったので、そういった描写がないほうがよほどおもしろいのに、中途半端だな、と首をかしげていた。
この感覚は、篠田節子が原作でテレビ化された「ハルモニア」でも覚えたことだ。中谷美紀が好きだったので見ていたが、途中で意味もなく超常現象のような描写が出る(とくに前半)。だが別に話はホラーではないし、それが話に必要だったのかと言われると、テレビを見ていた範囲だが、不要だったと感じた。なぜこんな中途半端なことをするのだろうと、あのときも思ったのだ。
この「カノン」は、話を調べていくきっかけとして幽霊もどきを出している印象が強い。そういうものが出てこなかったら主人公は知人の死を調べなかった可能性が高いのだ。だが、それを出さずとも別のきっかけを描くことのほうが自然ではないだろうか。むしろ不思議な出来事をぜんぶとっぱらって、人間ドラマとして描いたらかなりおもしろかったし現実味もあったのでは、と思う。
40代を間近にした女性が主人公で、全体的なテーマとしては共感できる人も多いはずだ。音楽は大の苦手で、音符が読めないことを自慢しているわたしでも、バッハがどうのなどの話の流れが、何となく理解できた。
持ち上げておいてなんだが、最後に:
終盤で主人公がある場所に出かけるのだが、こういう「思いこんだらどこまでも」な人がほんとうにいそうで怖い。周囲が迷惑するからやめてくれと、本の中なのにもう少しで腹が立ちそうになった(--;。
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