March 28, 2007

レニー・エアース「闇に濁る淵から」

講談社文庫で読んだ、久々の厚めミステリ。設定は1932年ころで、当然のことながら最新のDNA解析もなければ携帯電話も出てこない。田園地帯に起こる連続殺人に、十年前の別事件をきっかけに退職した警察官と、かつての同僚らが活躍する。

少女の惨殺死体が発見される。性的な暴力だけでなく顔は無惨に潰されていた。退職した元警官のマッデンは、地元警察が季節労働者を重要参考人として手配する中で、もっと大きな連続殺人事件である可能性を感じとり、事件を地元にとどめずスコットランドヤードに協力依頼するように働きかける。はたして、発覚が遅れていた別の少女の遺体や、過去の類似事件が浮き彫りになるが…。

どうもこの作者の前作(同じく講談社文庫、入手困難)で、マッデンに退職を決意させる「十年前の事件」というものが描かれているようだし、今作でそれがいかにひどいものであったか、現在はともに家庭を築いている医師(妻)との出会いもその事件にあったこと、彼女や家族がいまとても大切な存在であることを、うかがわせる構成になっている。だがその作品を読んでいなくても、問題なく楽しめる作品だった。

話をとことん大きくしていって「一般の警察官 vs 雲の上の悪人」にしてしまうのかと心配していたが、最終的にはそうでもなかったので妙に安心した。風呂敷をでかくしすぎると読む方が心配な結末になることもある(^^;。

講談社文庫は以前よく読んでいたが、愛読していた検屍官スカーペッタのシリーズがつまらなくなったこともあり、ほとんど読まなくなっていた。同シリーズにおいて、いきなり三人称小説になったり主人公の年齢設定まで変わってしまったのは、とまどいが大きすぎた。だが、海外小説も毛嫌いしないで読んでいれば、たまにはよい作品にも巡り会えそうだ。

Posted by mikimaru at March 28, 2007 08:41 PM
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