August 28, 2007

「八つ墓村」を読む

何を思ったのか、横溝正史「八つ墓村」を読みたくなった。届いたのは昨日だが、今日の午前から断続的にページをめくり、さきほど読了。

映像化されることが多い横溝作品で、原作を読んだのは、考えてみればほとんどない。わたしは以前から映像化されていない作品を探して読むか、原作を知らない映像化を見るのが好きだったためだろう。だからメジャーではない横溝作品ならば、何作か読んだ記憶がある。

読んでの感想としては、数年前に稲垣吾郎と小日向文世が出ていたテレビ作品にストーリーがもっとも近いように感じたし、原作にそこはかとなく香る「軽さ」も、あの番組シリーズの持ち味とよく合っていたと思う。映像化ではあまり描かれることのない主人公の実父の描写があったし、森美也子については原作が一番よく納得できた。

原作が一番おもしろい…と言いたいところだが、中盤からヒロイン(!?)となる典子さんという存在がどうもいただけない(^^;。これは何と表現したらいいのか、島田荘司の「龍臥亭事件」で初登場した犬吠里美が、パロディサイト事件、パロサイホテルなどの作品に出てくるたびにわたしが抱いた違和感というか、嫌悪感にかなり近い。

この作品での典子という女性は主人公に都合のよいように描かれ、人物像としてはかなり薄っぺらい。だが最後には成り行きのように、まとまるところにまとまる。わたしはこういうのが苦手なのだろう。作者が悪いのだから登場人物にどうこう感じても仕方ないのだが。これまで多くの映像化作品で彼女を登場すらさせなかったものがあるのは、便利すぎるこの存在がいないほうが話がおもしろくなる(話をスリリングに演出できる)という考えによるかもしれない。

龍臥亭事件は八つ墓村と同じく「津山30人殺し」に題材を得ているものであるから、島田荘司はこの(映像化作品でないがしろにされやすい意味では薄幸の)典子さんへのオマージュとして犬吠里美を世に送り出したのだろうかと、ふと思った。

Posted by mikimaru at 07:34 PM | コメント (0)