June 17, 2008

映画:パンズ・ラビリンス

1944年、内戦後のスペインが舞台。仕立屋だった実父が亡くなり、母の再婚相手である冷酷な軍人のいる山奥へと引っ越す、おとぎ話が好きな少女オフェリア。新しい父親は母のお腹にいる息子だけが大切で、周囲にもゲリラにも容赦がなかった。

山奥への道すがら、オフェリアは石のかけらを見つけ、ちょうどよく合いそうに思われた道ばたの塚にそれをはめこむ。すると中から大きな羽根のある生き物が現れた。わたしのようなすれた大人の目にはどう見ても巨大カマキリなのだが、想像力ゆえか期待をこめてか、少女はそれを妖精と呼ぶ。

つらく堅苦しい日々がはじまる。妖精に導かれた夜の森の奥深くで、彼女は地下世界への番人「パン」に出会う。パンによれば、彼女は地下王国の王女であり、三つの試練を越えれば元いた世界への扉が開かれるという。

母の容態変化、家の使用人とゲリラの秘密など、つらく重々しいことと同時進行で、オフェリアの冒険がつづく。

明るい魔法で救われる話ではない。ラストで少女はうっすらと笑みを浮かべるが、その目の先に写るものを、ほかの誰も知ることはないだろう。

人の心や尊厳を踏みにじる争いごとの汚さを、こんな年齢の子供と空想世界を通じて描き、嫌みではなく上品かつ的確にあぶり出す手法があるのだと、目を開かされた気がする。

パンズ・ラビリンスは国際的な英語名で、原題および作中の言語はスペイン語。

Posted by mikimaru at June 17, 2008 11:51 PM
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